●問題の根本的な原因を解決しなければなりません。
前項で、計画をつくるスタートは、現状を見直し問題点をメンバー全員で共有しなければならいと述べましたが、ここで必要なポイントは、「正しい事実を把握すること」です。
しかし、この当たり前のようなことが、現実には、なかなか難しいのです。
例を挙げて説明しましょう。
あるコンサルタントが、システム販売会社B社の営業部長から「拠点長のマネジメント能力を高めたいので、教育プログラムをつくって実施したい」という相談を受けたのです。
B社は約30拠点の営業所を展開していますが、拠点長によって業績に大きなバラツキが出ているというのです。
一口にマネジメント能力といっても様々な要素が含まれています。
ですからコンサルタントは、「B社の拠点長はどんなマネジメントのスキルが必要なのか」を見付けるために、全拠点長と話をすることにしたのです。
そしてわかったとは、「ほとんどの拠点長は、マネジメントする時間がない」という結果が出たのです。
どうしてそうなのかを詳しく調べてみると、B社の拠点長の8割は、各営業所の中でもトップの成績を上げるトップセールスであったのです。
つまり、一般的にいうところのプレイングマネージャーという立場だということです。
拠点長は最も多くの顧客を抱えていて、日々、営業活動に励んでいたので、部下とのコミュニケーションを取る時間すらなかったと、いうのが実態だったのです。
拠点長たちは、「営業所の目標を達成するために、まずトップである自分自身の目標を達成しなければならない」と考え、それを最優先に実行したため、部下がなかなか育たない、というジレンマに陥ってしまったのです。
では、B社の問題は、拠点長たちのマネジメント能力の不足だと言えるのでしょうか。
これまで教育体系が整っていなかったことを考慮すると、確かに「やらないよりは、やった方が良い」方法だと思います。
しかし、おそらくこの対処法では問題の根本的な解決になりません。
それは「なぜ、拠点長は、トップセールスであり続けなければならないのか」という疑問を解消しない限り、部下育成に掛ける時間が取れないという状況は解決できないでしょう。
その要因は、B社の場合では、個人実績を重視する評価度が高かったため、営業所全体の実績も大切なのですが、まず自分の実績を優先してしまう、といった傾向がみられているからです。
●その問題は、なぜ起きているのかを5回繰り返してください。
一般的には、問題を表面的に捉えてしまい、それに対処しようとする傾向が見られます。
例えば、「部門間のカベが問題だから合同の会議をするべきだ」「新規開拓ができていないから、1日3軒は、必ず新規訪問するように」「社員のモチベーションが低下してきているので、インセンティブ制度を導入しよう」などというような声が、あなたの会社で聞いたことはありませんか、これはビジネスに限ったことではありません。
「日本の国家財政は悪化しているのだから、消費税を上げるべきだ」「サッカー日本代表は得点力がないから得点力のある選手をメンバーに入れるべきだ」と、表面的な問題の対処策は、それを解決されればうまくいくように思えるのですが、それはあくまでもイメージでしかありません。
ですから、ひとたび問題を捉えたら、「それはなぜ起きているのか」を繰り返し問い掛けてください。
トヨタでは「“なぜ”を5回繰り返そう」という教えがあると聞いています。これも同じ理由だからだと思います。
ですから、その過程で、正しい事実を把握することが不可欠なのです。
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